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Uniting Food, Farm and Hotel Workers World-Wide



ドーハ開発ラウンド、生活破壊と大量失業と仕事の質低下の処方箋

Posted to the IUF website 22-Nov-2005



以下の声明は、IUF、国際公務労連(PSI)、国際金属労連(IMF)および貿易・投資・社会正義に関して活動を行ういくつかのNGOのイニシアチブの結果である。我々は、WTO交渉が、12月の香港閣僚会議で圧力を受け、農業、工業、漁業、林業、サービス業の雇用にはなはだしく悪影響を与えるだろうことを懸念し、共同声明でこれを表明した。

本声明を読んでいただき、もし、貴組織(個人ではなく)がこれに署名したければメッセージを貴組織の正式名とともにMike.Waghorne@world-psi.orgと Violaine.Roggeri@world-psi.orgにお送りいただきたい。本声明は全WTO加盟国および各国のまた国際報道機関に送られる。2004年11月24日の夕方までにこれをお送りください。PSIのホームページの本声明の後に、署名組織のリスト が更新され掲載されています。

WTO閣僚会議の声明が発表された暁に、我々はジュネーブで記者会見を開く予定である。本声明に署名した組織は、この声明を貴国の貿易、労働、農業相および国会議員に送り、この問題にさらに注目を集めるために現地報道機関に送っても良い。香港では、我々の論評と声明を明らかにするために、主な支持者を集めて共同記者会見を開く予定である。また、報道機関が使用できるように、貿易の自由化が、暮し、雇用、仕事の質の低下に与える影響の調査事例を集めていく。


1994年4月、マラケシで世界の貿易相がWTOの起草文書に署名した時、最初の文章はWTOは生活水準を上げ、完全雇用を確実にし、実質収入の大きく着実な成長。。。にコミットするというものだった。

マラケシの奇跡は現実化したか?雇用と生計の手段が確保され、着実に伸びているか?答えはノーだ。WTOの貿易と投資規則は世界をこれと反対の方向に進ませ、現在の交渉で我々はさらに反対に押しやられる危険性がある。

WTOの下で10年過ぎた後、世界で失業が増加した。現行の雇用の質が低下し、きつい、危険な、汚い仕事が増えている。仕事の大部分が不安定なものだ。実際、より多くの人々が正規の経済から、また農場労働者や農家の荒廃した暮らしから非正規の、保護されない、規制されない経済へと追いやられている。多国籍企業で、ますます多くの従業員が、臨時雇用となり、会社との関係が不安定になっている。人々は会社のために生産を行うが、もはやその会社に働いていない。というのは多くの多国籍企業が、例えばアウトソーシングなどによって直接雇用の労使関係の責任を逃れようとするからである。世界中の多くの人が、労働者、女性、農村の生産者、そして国全体さえも開発と強化の手段として、その希望を雇用に求めることをあきらめさせられている。

10年後、我々はいわゆるドーハ開発ラウンドの真ん中に立っている。教訓は学ばれただろうか?貿易交渉はこの大失策に解決策を提供しているだろうか?残念ながら、その見込みはない。貿易交渉の3つの主要な分野を見ていただきたい。農業、非農産品、サービスである。
過去10年間の農産物の貿易自由化の増進により皆が恩恵を受けられるはずだった。唯一の勝者はグローバルなアグリフードの多国籍企業である。これらの多国籍企業は、少数の生産国の主要産物の過剰生産と輸出を駆り立て、何百万もの雇用を喪失させ、価格を下げ、農業労働者、小作農、農家の大量移民をたきつけ、最も基本的な権利が擁護されない外国や既に過密状態の都市に地方から放浪者の波を送り込んでいる。WTOが市場開放を迫り、集約型輸出向け農業を体系的に促進することで、家族経営農業が消えていく中で、世界で最も富める国々の保護されない季節労働者や移民労働者の搾取の依存度が強まった。しかし、企業の社会的にも環境的にも破壊的な生産手段が奨励され、これは補助金を受けさえした。

開発途上国では、農産物の値崩れの解決策として、「農産物の多角化」の生花栽培や、「ニッチ」農産物の生産が奨励された。世界の農村地帯では、失業、飢餓、食糧不足がもっと多く起こっている。世界を食べさせる手伝いをしている人々が、ますます自分たち自身が食べられなくなってきている。農業の世界危機に行動が緊急に必要なのにもかかわらず、真の問題はWTOの議題で扱われていない。そして、香港閣僚会議の準備で出された現状打破案は、サービス部門と非農産品市場アクセス交渉(NAMA)における企業利益のために交渉を有利に導くための切り札として農業を使用するというもので、これは状況をさらに悪化させ、企業利益ではなく、人々のニーズを満たすための農業資源の合理的経営から遠ざけるものだ。

非農産品市場アクセス交渉は、開発途上国に工業、漁業、林業製品でも同様の影響を与える。これら諸国は、こういった製品の大幅な関税引き下げの圧力にさらされている。関税引き下げによって、製品価格の値下げにつながるかもしれないが、このためにしばしば現在のそして将来の雇用が犠牲にされる。漁業と林業は、世界中の何百万という人々に生活の手段と滋養、薬を提供している。世界の漁師の90%、ほとんど4000万人が小規模業業で雇用されており、これらの男女は圧倒的な貧窮状態である。1300万人が正規森林部門で雇用されており、16億の人々が暮らしの糧を森林から得ている。(薪、薬草、食糧を集めたりして)漁業、林業部門で関税を全面的に廃止するというWTOの提案は伝統的に人々が依存している自然資源の破壊とこのアクセスを失うことで、人々に深刻な影響を生むかもしれない。

関税削減案は、国際的な誘因を強化する。特に、巨大な商業用トロール船が、非常に破壊的な方法で漁業を行う誘因となる。そして既に深刻に涸渇している資源の搾取をさらにひどくするだろう。地元の漁師と貧しい漁村は、巨大な商業用船団が質の高い魚の大部分を捕獲してしまうために、死に行く海に、ますます苦しむだろう。強い国内市場を持つ沿岸諸国に安価な輸入魚がダンピングされる危険がある。そうなると漁師は獲った魚を地元で売れなくなる。同様に、林業でも欧州委員会の準備した影響に関するアセスメントは、高関税に擁護された開発途上国でさえも、「本産業の生産能力の縮小といくつかの産業の完全閉鎖により相当な環境的、社会的コストが生じるだろう」と言っている。

もし、安価な輸入品が国中に溢れ、そして該当産業が弱ければ、その産業は一掃されてしまう。そのために失業率が高くなる。該当産業がいまだ確立していない国では、こういった輸入はしばしば開発のルートである持続可能な産業雇用の進展を妨げるだろう。現在の交渉は、ディーセントな雇用も開発も生み出さない。そして、大量の失業を生み、現在の生活の糧を破壊するかもしれない。同時に政府からは必要とされる関税歳入を奪う。もしこのプロセスからいくつかの雇用が開発途上国で生みだされたとしても、これは大概もっと高い先進国の職が奪われた結果である。しかし開発途上国間でも競争が熾烈化している(繊維部門のように)。こういった仕事のほとんどが、賃金が低く、不安定なものである。

サービス部門が雇用創出のための魔法の処方箋となりうるか?これは最も成長の早い雇用部門である。サービス交渉は政府の民営化、アウトソーシング、あるいはGATSの下で、逆戻りできないコミットメントを行えることをベースとしててサービス部門の自由化を行うことに依存している。雇用に関していえば、こういった手段で良い記録があるものはない。人々は仕事を失うか、あるいは仕事があっても不安定で、質、賃金共に低いかのどちらかである。多くの多国籍企業が足の向くまま気の向くままで、利益が下がり出したり、もはや利益を生じなくなるやいなや退去してきた過去がある。サービス労働者が取り残され、ハンバーガーを裏返す仕事や、コールセンターの仕事で競争を行っている。ネオリベラルはAからBに100の仕事がシフトしても、まだ100の仕事があるというが、シフトするたびに10の仕事が失われ、仕事の安定性と質はどんどん落ち込んでいき、ディーセントワークはやがて排水口に落ちていく。

仕事はまた、サービス交渉の不可欠の部分である。サービス提供のための一国から他国へ人の臨時移動に関するモード4の討議で、これらの労働者は低賃金と劣悪な労働条件にさらされるだけでなく、送り出し国がしばしば価値の高い技能を失うことになるという話がされた。この高い技能はコストの高い現地の訓練計画の結果であるが、これが北に頭脳流失し、看護士や教師を自国の医療制度、教育制度の中にとどめて置く社会的に相応な北の賃金や労働条件を南が提供しないがために、南は北に補助金を与えていることになる。モード4の交渉は、単に開発途上国の大量失業の『必然』を容認していることである。WTOはモード4交渉で上げられる労働や移民の問題を扱う権限を持たない。モード4はGATSで扱われるべきではない、むしろ、より長期の、より安定した、権利を基本とする移民計画が不可欠であると我々は確信する。

現在の貿易-成長―開発のパラダイムは失敗だ。世銀、IMF、OECDのデーターさえもこれを認め出してきている。一定の状況下では、もっと多くの貿易が成長を生み出せる。我々は常に問う必要がある。どんな成長か?誰のための成長か?今日は単に仕事のない成長であり、これは世界中で広く知られる現象だ。貿易と国内成長の統計は今日、国の真の富や、人々の幸福の指標として意味がない。(しかし企業の富の指標である)一番重要なのは、これらの統計が表しているのはどんな種類の成長で発展のパターンなのか、そしてこのパータンは農家や労働者が社会的に相当な収入を得、相応な労働条件や生活の糧を手にすることができるようになるものか、あるいは反対にますます貧困が進み、不安定になっていくのかということである。

農業、工業生産、サービスの自由化を進める提案は、少数の多国籍企業の利益のために、先進国、また開発途上国においても新たに巨大な失業の波を起こし、現在の雇用と暮らしの手段を悪化させることになるだろう。
この雇用の大量破壊の計画は止めなければならない。

ここに署名を行った労働組合および市民社会団体はWTO加盟国に対して、

• 現在の交渉を一時停止し、
• 現行の貿易と投資規則が雇用、社会、環境、文化に与える影響に関して全面的な公の評価を行う、
ことを要請する。
国際貿易と投資を統治する規則は、一つの基準に従って判断されるべきだ。すなわち、社会的、環境的に持続可能な経済成長の方向に進展し、社会進展を生み出し、人々に大きな幸福をもたらすものか?ということである。あるいは我々を逆の方向に進ませ、社会的環境的破壊や大量移民や世界中で不安を生むだろうか?WTOの最初の10年間でその評決は明らかである。今こそコースを変える時だ。